本コンサートは、解説を交えたレクチャー・コンサートの形で開催するものである。テーマとして掲げた「悼み」とは被爆者の心の痛みであり、本コンサートでは被爆者によって作曲された音楽作品の上演と、被爆詩人の詩の朗読を通して被爆者の思いを想像することを主旨とする。
一方で、被爆者の心の傷の根底には、生き残ったことへの負い目も重なり、原爆で亡くなった死者への悼み・祈りの念が強くみられることが多い。さらに、こうした死者への哀悼、弔いの心性は、日本人の死生観に通ずるようであり、こうした心性が日本的な「レクイエム(鎮魂歌)」の表現へとつながっていると思われる。よって、戦争や原爆死者に関わらず、死者に思いを馳せながら作られたさまざまな鎮魂の旋律を奏でることにより、戦後日本人の多くが抱えているであろう「死者への悼み=生き残った者の傷み」を想像する内容構成とする。
具体的には、次のような内容となる。
被爆者でもあり作曲家でもある二人の作曲家、竹西正志氏と川崎優氏の作品の上演、また被爆詩人の橋爪文氏が原爆について表した詩集の朗読を中心とする(曲目は下記)。
さらに、亡くなった知人への思いを表した福島和夫氏の作品や、亡き妹への思いを「鳥」に託した吉松隆氏の作品、反戦を題材にした創作活動でも知られる故三善晃氏の作品を詩の朗読と組み合わせることにより、「ヒロシマ」への祈りとともに日本の祈りについて、音楽を通して感じる場を作ることを目指す。
吉松隆 『 鳥のいる間奏曲 』、 『 傾いた哀歌 』 (ピアノ独奏
竹西正志 『 哀傷I 』、『 哀傷II 』 (ピアノ独奏)
川崎優 『 祈りの曲第5「暁の祈り」 』 (フルートとピアノ)
『 祈りの曲第6「夕べの祈り」 』 (フルートとピアノ)
福島和夫 『 レクイエム 』 (フルート独奏)
橋爪文 詩集『 地に還るもの天に昇るもの 』、『 昆虫になった少年 』 (朗読)
三善晃、吉松隆、野村茎一による小品 (ピアノ独奏)
日時 : 2016年7月9日(土)18時半開演(終演20時15分頃) (18時開場)
場所 : 広島市南区民文化センター スタジオ
料金 : 前売り1,500円・当日2,000円
出演者: 桂杏子(ピアノ)、三浦ひろみ(朗読)、山本綾香(フルート)、藤本佳奈美(ピアノ)
企画・構成: 能登原由美
進行・解説: 能登原由美
主催 : 「ヒロシマと音楽」委員会