ドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」が完成しました
私たち「ヒロシマと音楽」委員会が製作したドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」についてご紹介します。
私たち「ヒロシマと音楽」委員会は、「ヒロシマ・ナガサキ」や「反核」をテーマにした音楽作品のデータベース化を主旨として、被爆50周年の1995年に設立された市民団体です。2004年にはそれまでに収集した1,800曲余りのデータベースを広島市へ移管し(一部は広島平和記念資料館所蔵「平和データベース」で公開)、2006年には楽曲のリストと作曲家の言葉などをまとめた『ヒロシマと音楽』(汐文社)を刊行しました。その後、現在までにデータベース化した楽曲数は2,000曲余りに上っております。一方、収集した作品をより広く紹介するべく、コンサート・シリーズ「ヒロシマ・音の記憶」を2010年より毎年開催しており、4回目となる今年のコンサート「ヒロシマ・音の記憶vol. 4~継承~」は、広島市のほか広島県福山市においても開催することが決まっております。
さらに、もう一つの重要な活動として、戦前から戦後にかけての広島の音楽活動の調査も開始しておりますが、その調査の過程で明らかになったのが、「広島学生音楽連盟」(昭和21年~25年3月)の活動です。この団体は、原爆で荒廃した広島を勇気づけようと市内複数の旧制高校の生徒により被爆の翌年に結成された団体で、自ら合同合唱団を結成して演奏活動を行ったほか、東京から一流の音楽家を招聘してチャリティーコンサートを開催していた事実などが私たちの調査で明らかになりました。旧制高校廃止とともに終了したため活動期間が3年余りと非常に短く、その結果、私たちの調査が入るまではほとんど知られることのない存在となっていました。
「ヒロシマと音楽」委員会は、「広島学生音楽連盟」の音楽活動が被爆復興に果たした意義は大きいと捉え、団体の中心メンバーだった人々へのインタビューを映像記録に残すことにしました。さらに、彼らの活動を現在の同世代にあたる高校生に伝えるべく、インタビュー映像の上映と市内高校生による合同合唱を組み合わせたコンサートを2011年に開催しました。この度製作した映画は、「広島学生音楽連盟」の活動の実態を追うとともに、2011年のコンサートの様子、それに参加した高校生へのインタビューを記録し、音楽の果たした役割のほか、次世代への被爆体験の継承を改めて問うものとしております。
2010年より撮影を開始した映画は本年7月1日に完成し、8月後半から2週間にわたって広島市内の映画館にて一般公開されることが決まりました。
2013年7月1日
「ヒロシマと音楽」委員会
ドキュメンタリー映画「音の記憶・つながり」の概要
・上映時間・・・68分
・出演・・・原田雅弘、千葉佳子、崇徳高等学校グリークラブ、
広島女学院高等学校音楽部、安田女子高等学校音楽部、ほか
・監督・撮影・・・青原さとし
・企画・製作・・・「ヒロシマと音楽」委員会
・製作・・・NPO法人法人ANT-Hiroshima
・製作年・・・2013年
・一般公開・・・2013年8月18日~30日 横川シネマ(広島市西区)
・内容・・・被爆の翌年、広島の学生たちが集まり合同合唱団を結成した。その団体の名は「広島学生音楽連盟」。市内の複数の学校の生徒により結成されたこの団体は、合唱活動のほか、東京から一流の音楽家を招聘したコンサートを定期的に開催するなど、原爆で荒廃した広島を勇気づけようと奔走した。「ヒロシマと音楽」委員会は戦後広島の音楽活動を調査する過程でこの団体の存在を知り、2011年6月に開催した「ヒロマ・音の記憶 Vol.2~繋がり~」の中で、現役の高校生による合同合唱団の演奏を通じて紹介した。映画「音の記憶・つながり」では、「広島学生音楽連盟」結成時の中心メンバーだった人々へのインタビューと彼らの被爆後の長い歩みに目を向けるとともに、現代の若者がこうした活動をどう捉えるのか、2011年のコンサートに参加した現役高校生へのインタビューを通してその様子を伝えている。