2006年7月 「ヒロシマと音楽」を汐文社から出版しました。
「ヒロシマと音楽」 出版にあたって
「ヒロシマと音楽」委員会は被爆50周年の1995年4月より、ヒロシマに関わりのある音楽の資料作成に取り組んできました。各方面からの寄贈資料を保有している広島市の平和文化センターや、故芝田進午氏の著書「反核・日本の音楽」を出発点とし、放送メディアなどを通して眠ったままになっているデータの掘り起こしを行ってきた結果、1867曲のデータベースを集約しました。内訳をみると、約4割をクラシックが占め、ポピュラー、邦楽、民謡の順となっています。クラシックについては、その8割が声楽曲で残りの約2割が器楽曲です。ほかのジャンルでもほぼ同様な傾向で、圧倒的に歌詞をともなう声楽曲が多く、単なる抽象的な音のメッセージではなく、言葉を介してよりリアルに作者の心情を訴えたかったからと思われます。このデータベースは2004年3月に広島平和文化センターに引き渡し、2004年8月より、広島平和記念資料館のホームページで公開されています。
この取り組みで得た資料を基に「ヒロシマと音楽」の全容を本にまとめました。
初版:被爆61周年 (2006年7月10日)
出版社:(株)汐文社 03-3815-8421
編者:「ヒロシマと音楽」委員会 編
定価:1,575円(消費税込)(8月より原爆資料館売店にて販売予定)
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推薦の言葉 | 秋葉 忠利 広島市長 |
はじめに | |
「ヒロシマと音楽」資料作成事業について | 小森 敏廣 |
第一章 ヒロシマの音楽 その歴史的展望 | |
音楽はいかにヒロシマを伝えてきたか | 原田 宏司 |
第二章 ヒロシマを歌い継ぐ | |
平和教育の中での原爆音楽 | 能登原 由美 |
第三章 「ヒロシマと音楽」資料作成にあたって | |
一 忘れ得ぬヒロシマの音楽 | 井上 一清 |
二 ヒロシマの音楽を生み出した現場と作品(主として歌曲) | 千葉 佳子 |
三 ヒロシマの合唱曲 | 才木 幹夫 |
四 ラテン系アーティストに見るヒロシマ | 山崎 克洋 |
五 「ヒロシマと音楽」と私 | 渡部 朋子 |
六 高橋一之さんの話 | 増田 泉子 |
七 歌い継がれる原爆音楽「歌謡曲」 | 上寺 晃子 |
八 委員会の活動を振り返って | 濵本 恵康 |
九 市民によってつくられるヒロシマの音楽 | 能登原由美 |
第四章 作曲家からのメッセージ(五十音順) | |
ヒロシマの叫びと祈り | 植野 洋美 |
私のヒロシマ | 尾上 和彦 |
ある態度表明 | 黒住 彰博 |
ヒロシマへの祈り | 糀場 富美子 |
太田川とヒロシマ | 伴谷 晃二 |
わが信条 | 永井 主憲 |
ヒロシマへの想い | 久留 智之 |
《ヒロシマ・声なき声》 | 細川 俊夫 |
「ヒロシマと音楽」データベース リスト | |
参考楽譜 | |
・〈ヒロシマの有る国で〉 | |
・〈アオギリのうた〉 | |
・〈世界の命=広島の心) |
「ヒロシマと音楽」資料作成事業について
広島・長崎の被爆以後、世界の多くの人々は人類の絶滅を現実のものと考え、さまざまな表現行為を行ってきた。文学、映像などの分野では、ヒロシマ・原爆・核兵器廃絶・平和に関する資料について関心も高く、データベース化も進んでいる。しかし、音楽の分野においては、資料収集すらいまだ充分とはいえない現状である。
被爆50周年の1995年4月、RCC中国放送は被爆地の放送局の使命として、開局以来取り組んで来た報道・制作事業の節目として、また2002年のRCC中国放送創立50年を念頭におき、21世紀の新たな50年の第一歩とすることを目標として、「ヒロシマ50年プロジェクト」を発足させた。そして、その「ヒロシマ50年プロジェクト」の事業の一つとして「ヒロシマと音楽」実行委員会を結成し、「ヒロシマと音楽」に関わる資料作成事業に取り組むことにした。
RCC中国放送の「ヒロシマ50年プロジェクト」企画書では、「ヒロシマと音楽」資料作成事業について、次のように記している。
被爆50年を迎えた1995年、広島の民間放送ラジオ局としての最もふさわしい事業と考え、「ヒロシマ50年プロジェクト」のひとつの事業として、「ヒロシマと音楽」資料作成事業に取り組みます。この事業は、被爆五十年を機に、音楽関係者、広島市関係機関の協力を得て、歌謡曲・ポピュラー・クラシックなど音楽のすべての部門でヒロシマ・原爆・核兵器廃絶に関わりのある曲のリストアップと掘り起こし、音源の確認、付帯資料の作成等を行い、データベース化しようとするものです。調査項目としては、曲目、部門、作曲者、作詞者、演奏者、楽譜の有無、音源の有無、音源の所有者などが考えられます。
「ヒロシマと音楽」実行委員会によるこの事業は、被爆50周年の1995年4月から2002年3月までRCC中国放送の主宰により行われたが、2002年11月からはRCC中国放送を離れ、現在の「ヒロシマと音楽」委員会に引き継がれている。2004年には当初からの念願であった広島市へのデータベース移管が実現し、新たな局面を迎えることになった。
この間、収集したデータは1999年8月からRCC中国放送のホームページ上に掲載され、2004年8月からは広島平和記念資料館の「平和データベース 音楽・音声」で掲載されている。「ヒロシマと音楽」データベースが掲載されているホームページのアドレス(URL)は次の通りである。
広島平和記念資料館の公式ホームページ 平和データベース
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/database/
「ヒロシマと音楽」に関わる資料作成事業は、今後もこのような趣旨の音楽が生まれる限り続けられるべきものと思われる。委員会では広島平和文化センターへのデータベースの寄贈を一つの節目として、これまで各委員が関わってきた率直な印象や経験を活字にまとめ、収集したデータとともに出版に踏みきることにした。誠にささやかな成果ではあるが、私どもの取り組みの一端をご理解いただければ幸甚である。
次に「ヒロシマと音楽」データベースに関する概要を記しておきたい。
データベース作成の概要
① 「ヒロシマと音楽」で資料収集する対象
広島の原爆被害をテーマとする曲
ノーモアヒロシマの祈り・願いをテーマとする曲
核兵器のない平和な社会の希求をテーマとする曲
広くヒロシマをモチーフとする曲
② データベース作成の方針
すべてのジャンルにわたり「ヒロシマと音楽」に関する国内外のデータを入力する。
楽譜の所在、音源の有無を入力し、実用に即したデータベースを志向する。
作品や作曲者に関する情報もできるだけ入力する。
③ 資料収集の方法
RCC中国放送に保管されているレコード・CD・ラジオ番組データベースの資料、(財)広島平和文化センターの資料、広島市文化振興事業団(現広島市文化財団)の資料、『反核・日本の音楽』(芝田進午ら編 1982年 汐文社刊)の資料、等を基礎資料とする。1995年の「ヒロシマと音楽」実行委員会の設立時からRCC中国放送が放送でよびかける。音楽家ユニオン所属の作曲家・指揮者によびかける。基礎資料のデータから作曲者・作詞者へ問い合わせ、情報を補足する。
④ データベースの項目
部門、曲名、曲名(カナ)、原題、作詞者名 国名・生年~没年、訳詞者名、作曲者名 国名・生年~没年、作曲年、編曲者名 編曲年、 編成、初演年月日、初演場所、演奏者名、演奏時間、音源(有無)、楽譜(有無)、再演年月日、著作権登録(有無)、記事で構成。
データベースの概要(2004年3月25日現在)
①データベースに登録された曲数は、1867曲
分野別による内訳
ポピュラー 歌謡曲 クラシック 邦楽 民謡 その他 |
77曲 142曲 642曲 29曲 13曲 964曲 |
②作曲年代別による内訳
1940年代 1950年代 1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 年代不明 |
28曲 105曲 102曲 155曲 194曲 52曲 5曲 1226曲 |
③音源が確認されるものは463曲
保管場所は、RCC中国放送、広島平和記念資料館、作曲者本人。
楽譜が確認されるものは⑤12曲
保管場所は、RCC中国放送、広島平和記念資料館、芝田資料、作曲者本人。
音源、楽譜ともに確認されるものは223曲。
「ヒロシマと音楽」データベース リストについて
このリストは「ヒロシマと音楽」実行委員会によって1995年4月から2002年3月までの間に収集したデータを基にしているが、2002年3月以降は「ヒロシマと音楽」委員会が収集したものを掲載した。データベースの概要は「はじめに」の項で述べた通りであるが、作成にあたっては、これまで公にされている原爆被災資料広島研究会編『原爆被災資料総目録』第二集(1960年)、芝田進午ほか編『反核・日本の音楽』汐文社(1982年)、中国新聞社編『年表 ヒロシマ~核時代50年の記録~』メディア開発局出版部(1995年)を、まず底本として使用させていただいた。これらの業績がなかったなら、特に初期のデータを確認することはきわめて難しかったと思われる。心からの敬意と謝意を表したい。併せて中国放送、広島平和文化センター、広島市文化振興事業団(現広島市文化財団)の資料を参照させていただいた。さらに当時の演奏記録や録音、楽譜等を手がかりに照合したり、中国放送ラジオでの資料提供の呼びかけを通して、かなりのデータを補うことができた。
データベースの項目は、前述の通り多岐にわたっているが、この年表ではその中から、作曲年、曲名、作詞者名、作曲者名、楽譜(有無)、音源(有無)、関連記事に絞って掲載した。
【凡 例】
作曲年 月が判明しているものは古い順に、月が判明しないものはその後に掲げ、作曲年が判明しなかった曲は割愛した。
楽譜(有無) 所在が確認されたものは〇を記した。
保管場所は RCC中国放送、広島平和記念資料館、芝田資料、作曲者本人。
音源(有無) 所在が確認されたものは〇を記した。
保管場所は、RCC中国放送、広島平和記念資料館、作曲者本人。
収集したデータは2004年8月からは広島平和記念資料館の「平和データベース 音楽・音声」で掲載されている。
広島平和記念資料館の公式ホームページ 平和データベース 音楽・音声
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/database/
データベースでは音源や楽譜の所在等も確認できるので、これを契機に演奏の可能性は大きく開けてくると思われる。また、平和教育教材に適した作品を紹介している。利用されることをねがう。
出版は1000冊、広島市内の小・中学校・高校に寄贈して平和教育に役立てたい。
「ヒロシマと音楽」委員会
代表 原田宏司(広島大学名誉教授)
メンバーは11名
被爆50周年の1995年4月から、ヒロシマにかかわりのある音楽のデータベース化に取り組む。放送メディアなどを通して、これまで眠ったままになっていたデータなどを掘り起こした結果、1867曲のデータベースを集約。2004年8月から、このデータベースは広島平和記念資料館のホームページ「平和データベース 音楽・音声」で公開されている。